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2013年7月 9日 (火)

中漠:臨済編⑫五山の完成

 天竜寺船が中国の寧波に向かう前年、足利尊氏・直義兄弟は五山の制度を改めて制定します。既に、鎌倉幕府が鎌倉の建長寺・円覚寺・寿福寺、京の建仁寺、他一寺を指定し、後醍醐天皇は京の南禅寺、大徳寺、東福寺、建仁寺、他一寺を五山としました。
 これから建てる天竜寺を五山に入れることが大前提です。北朝の光巌上皇は1341年(暦応四年)に院宣を出して尊氏に五山の決定を一任します。これに応えて同年に尊氏は第一位に南禅寺&建長寺、第二位に円覚寺&天竜寺、第三位に寿福寺(鎌倉)、第四位に建仁寺(京都)、第五位に東福寺(京都)、准五山(次席)に浄智寺(鎌倉)の八つの寺院を選定します。
 既にご紹介している寺社ばかりですが、鎌倉幕府の五山と後醍醐天皇の新五山に、天竜寺が新たに加わったことと、後醍醐天皇が五山に加えた大徳寺が外されていました。これは浦上氏出身の宗峰妙超が後醍醐天皇に肩入れしたことや、この寺がそもそも花園上皇の開基によるものです。同じ持明院統の天皇といっても花園上皇は当時の今上帝である光明天皇からみれば傍系の天皇であったことも作用したかと思われます。
 これ以後、五山の決定及びその住持の任免権は足利将軍個人に帰するという慣例が成立しました。この時あわせて十刹が選ばれております。五山以外にも、五山候補の有力寺院がここに入っているということなのでしょう。鎌倉幕府からこれが選ばれていたとされますが、詳しいことは不明です。以下の寺院が選ばれていたといいます。

 浄妙寺(鎌)、禅興寺(鎌)、聖福寺(鎌)、万寿寺(京)、東勝寺(鎌)、万寿寺(鎌)、長楽寺(鎌)、真如寺(鎌)、安国寺、万寿寺(豊後)

 浄妙寺は足利氏の鎌倉における臨済宗菩提寺です。その他は鎌倉の幇助受け縁の寺や夢窓疎石が設置した安国寺なども含まれています。大徳寺はこの五山予備軍である十刹の選にも漏れてしまいました。安国寺は夢窓疎石が全国に建てた利生搭(りしょうとう)を祀る施設なんですが、これが特定の寺院を指すものかは不勉強なのでわかっていません。

 それから、歴代の将軍や管領の意見も入って入れ替えが行われ、1386年(至徳三年)最終的に五山十刹は下記の通りとなります。

京都五山:南禅寺(別格)、天竜寺、建仁寺、東福寺、万寿寺、相国寺
鎌倉五山:建長寺、円覚寺、寿福寺、浄智寺、浄妙寺

京都十刹:等持寺、臨川寺、真如寺、安国寺(後に廃寺)、宝幢寺
     普門寺(→後に廃寺)、広覚寺(→後に廃寺)、妙光寺、大徳寺、竜翔寺
関東十刹:禅興寺、瑞泉寺、東勝寺(→後に廃寺)、万寿寺(鎌倉→後に廃寺) 、大慶寺(→後に廃寺)
     興聖寺、東漸寺、善福寺(→後に廃寺)、法泉寺(→後に廃寺)、長楽寺(→後に天台宗改宗)

 さらにその下に諸山というものがあり、特に幕府が指定したものがあたりました。これには数の制限が加わらなかったため、調べが追いついておりません。諸山は北条高時の頃からあったといいます。五山・十刹・諸山は幕府が定めた官寺であり、これらを総称して禅林と呼ばれました。

 五山僧は中国元・明とのチャンネルをもっておりました。そもそも元寇の折に元から使者としてつかわされた一山一寧大師が紆余曲折を経て、戦後もそのまま日本に残って南禅寺の住持をつとめております。その人脈の系譜を室町幕府は最大限に利用したものと思われます。
 足利尊氏のために天竜寺船を元に派遣することを企画した夢窓疎石(むそうそせき・南禅寺)を筆頭に、義堂周信(ぎどう しゅうしん・建仁寺)は三代義満の家庭教師を務め、絶海中津(ぜっかい ちゅうしん・相国寺等)、春屋妙葩(しゅんのくみょうは・臨川寺)は義満の代における外交顧問として働きました。瑞渓周鳳(ずいけいしゅうほう・相国寺)は八代義政の外交僧として活躍しています。季瓊真蘂(きけいしんずい・鹿苑院)は幕閣人事に介入して失脚し、それが応仁・文明の乱のきっかけとなっております。

 大徳寺は五山からは漏れたものの、最終的に京都十刹の第九位に選ばれております。但し、当の寺側はそれを潔しとせず、宗峰妙超の一風変わった禅を前面に押し出し、自らを禅林の下として林下と称しました。この林下には、宗峰妙超の弟子である関山慧玄が宗峰妙超の死後も花園上皇を教え導くために建てた妙心寺が含まれております。ちなみにこの妙心寺は妙心寺派の本山として現代では臨済宗最大の勢力を有しております。

 このように、臨済宗は武士階級や公家の保護の下に文字通り大勢力を築いていたわけです。それはまさしく、一個の世界と呼んで良いものだったと私は思います。

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